ヒトfibroblast growth factor (FGF)は、血管新生、創傷治癒など多様な生理的機能を有し、放射線腸障害を防護する可能性がある。FGFはヘパラン硫酸または類縁体のヘパリンの共存下でFGF受容体(FGFR)と結合してシグナル複合体を形成し、生物活性を発揮すると考えられている。FGF receptor 2IIIb (FGFR2b; KGFR)は、FGF1、FGF7、FGF10に対する高親和性レセプターであり、上皮細胞にのみ発現し、腸障害の修復に大きな役割を発揮する。一方、FGF1は他のFGFRにも反応し、より広い範囲の標的細胞をもつ。よって、その特性を発揮できる医薬を創出できれば、その有用性は極めて高いと期待される。しかしながら、FGF1は外来ヘパリンへの依存性が高く、分子としても不安定であるため、医薬化されていない。今回、FGF1/FGF2キメラタンパク質の至適化を図り、安定性の高い分子(FGFC)を選択したので、BALB/cマウスの放射線腸障害に対する防護効果を評価した。まず、特定のサブタイプのFGFRを強制発現させた細胞を用いて受容体特異性をin vitroで評価した結果、FGFCはFGF2が反応できないFGFR2bに対しても強い活性を有するだけでなく、FGF1と同様に全てのサブタイプのFGF受容体を刺激できることが示された。一方、FGF1、FGF7、FGF10のマウス腹腔投与24時間後に8から12Gyのガンマ線全身照射を施行し、その3.5日後の小腸クリプト生存率を評価したところ、ヘパリン存在下でFGF1投与群は、FGF7、FGF10投与群に比較して増加傾向を認めた。次に、FGF1、FGFCを腹腔内投与し、同様に小腸クリプト生存率で比較検討したところ、...