うつ病は近年増加しており、うつ病患者の約10-30%が既存の抗うつ薬が奏功しないと言われている。このようなことから新規抗うつ薬の開発が求められている。現在臨床で使用されている抗うつ薬は、「モノアミン仮説」に基づき開発され、モノアミントランスポーターの阻害または受容体への作用によりモノアミンレベルを上昇させて効果を発揮する。しかし、モノアミンレベルを上昇させるといってもモノアミンの動かし方、つまり1)抗うつ薬によって上昇させるモノアミンの種類および組み合わせ、2)そのモノアミンが作用する受容体、3)抗うつ薬が作用する脳部位、などの違いによって抗うつ作用の増強や新規作用を併せもつことが考えられ、事実、臨床上の効果も異なる。高濱らはこれまでに、中枢性鎮咳薬が脳ニューロンにおいてGタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオン(GIRK)チャネル活性化電流を抑制することを見出した。本チャネルは5-HT1A、アドレナリンα2、ドパミンD2受容体などの様々なGタンパク質共役型受容体と共役しており、細胞の興奮を抑制する際に重要である。従って、本チャネルを抑制する薬物は、脳内モノアミンレベルに影響を与えることは十分考えられ、実際、本薬物は脳内モノアミンレベルを上昇させるという知見を得ている。(続く)また、高濱らはこれらの薬物は鎮咳有効量で、1)脳梗塞モデル動物の排尿障害、2)薬物誘発性の多動、3)環境ホルモン様物質による学習障害、など様々な難治性中枢病態モデル動物に対して改善作用を示す事を明らかにし、これらの改善作用にはGIRKチャネル抑制作用とそれを介したモノアミン系の関与を示唆する知見がある。これらのことを踏まえて本研究において、GIRKチャネルを抑制する中枢性鎮咳薬が、抗うつ様作用を有しる...