脳梗塞急性期の治療薬の薬効評価は一般的にはラット脳虚血モデルが用いられている。今までに開発されてきた薬剤はそれらのモデルで有効性が確認されていたが、臨床試験ではあまりよい結果ではなかった。このことから、ラットモデルでの薬効評価に限界があるのではと疑問視されている。そこで今回、よりヒトに近いサルを用いて中大脳動脈を閉塞し脳梗塞モデルの作成を試みた。サル中大脳動脈を一時的に閉塞するモデルと永久に閉塞するモデルを作成しそれらのモデルにおける梗塞進展に違いをポジトロン エミッション トモグラフィ(PEr)を用いて評価した。PETスタディでは局所脳血流量、酸素摂取率、酸素消費率を経時的に評価した。さらに、免疫抑制剤であるFK506の脳梗塞への影響を検討した。一時虚血モデルは中大脳動脈を3時間閉塞後再開通させた。永久閉塞モデルは中大脳動脈を8時間閉塞し続けた。再開通後5時間(閉塞後8時間)に脳を取り出し病理学的に梗塞の広がりを検討した。PETで観察した結果から中大脳動脈閉塞中は主に基底核領域の血流量が高度に、また皮質領域は中程度低下していた。永久閉塞モデルでは血流量の変化は中大脳動脈閉塞直後の変化が8時間後まで続いた。閉塞8時間後の酸素消費率の低下していた領域は病理学的検討による梗塞の広がりとよく相関した。永久閉塞モデルの梗塞の広がりは主に基底核領域にあり、皮質領域にはほとんどなかった。一方、一時脳虚血モデルでは、血流を再開通すると特に皮質領域で血流量の上昇が見られたが、再開通5時間後には再び血流量の低下が見られた。この低下は多分No-reflow現象と思われた。一時脳虚血モデルにおける梗塞の広がりは基底核だけでなく皮質領域まで広がっていた。これは再灌流傷害によるものと考えられた。虚血直...