中国は世界でも災害が多発する国家の一つとして知られている。本稿のねらいは、多発する災害に、中国がどのように法整備を進め、災害救助システムを構築していこうとしているのかを明らかにすることにある。本稿を通じて、中国の災害の特徴や防災減災に向けた法体系を分析し、法体系において定められた個人の役割についても検証した。防災減災にかかわる法整備の面では、数多くの法や行政法規が整えられ、大半の法律、行政法規において、個人の防災減災活動への参加が義務として位置づけられていることがわかった。また、現状の中国での防災減災にかかわる法律や行政法規は、発生する自然災害へ個別に対応する制度であり、総合的な視点から防災減災に対応する法の成立にはまだ至っていないことも明らかすることができた。併せて、中国の災害救助の基本方針を確認し、災害救助システムについても考察を行なった。災害救助活動の基本方針は2006 年以降変化が見られ、従来の“自救”(自助)を主とする方針から、政府が責任や主導を前面に押し出し、自助や互助も強化する方針へと変更している。災害救助システムでは、さまざまな課題が浮き彫りになった。災害救助において重要になる災害損失補償では、一般の商業保険を含み、自然災害への保険補償が整っていないことが見えてきた。保険による補償を強化していくためには、保険の意義や災害リスクへの対応について、どの程度理解が深まるかが重要になるだろう。さらに、バランスの取れた災害救助システムの構築に向け、それぞれの役割の発揮が求められていることも、本稿を通じて見えてきた。災害救助システムの一環として、社会組織や個人による慈善事業、寄付が強く推奨され、「慈善法」も成立させ、社会を挙げて慈善事業や寄付を押し広げていこうとしている。...