金沢大学理工研究域現状のヘルメットやエアバッグなどの防護用品の設計基準は,脳の変形を考慮せずに,単に頭部を剛体とみなしたときの並進加速度のみから算出されており,実際の脳外傷の発生にそれほど関係がないと言われている。そこで,脳外傷の発生メカニズムを解明し,それに基づく設計基準を制定することが,事故の犠牲者を減らす上で重要となる。そこで,衝撃を受ける頭部の外傷発生メカニズムを解明するために,主に頭部FEモデルを用いた研究が行われているが,生体実験データの取得が困難であるため,その妥当性は十分に検証されていない。一方で,球等の単純形状の物理モデルを用いた実験も行われているが,実際に人体で起きる現象を把握できるとは言い切れない。そこで,本研究では特定個体の医用画像から構築された頭部の三次元CADデータからラピッドプロトタイピング技術を利用することにより,形状忠実な頭部の物理モデルを製作するとともに,同一形状を有する有限要素モデルも構築した。さらに,前年度において頭部物理モデルにより行われた衝撃実験結果により有限要素モデルの妥当性を検証した。その結果,従来研究での個体が異なる屍体実験結果を用いた検証では困難であった,頭部FEモデルの流体-構造の連成系の扱い,脳と頭蓋の境界条件および材料特性などの誤差要因の影響について検討し,定量的に同定を行うことが出来た。さらに,同定された頭部FEモデルを用いた高速度衝撃シミュレーションにより,その発生部位および形態に特徴を有する脳挫傷は頭蓋骨の解剖学的形状の影響で衝撃部位により好発部位が異なることを明らかにした。研究課題/領域番号:18800015, 研究期間(年度):2006-2007出典:「形状忠実な頭部物理モデルとFEモデルによる脳外傷発生メカ...