金沢大学医薬保健研究域医学系緑内障では、視覚情報を脳に伝える視神経(網膜神経節細胞の軸索)が選択的に障害され失明に至るが、ヒト緑内障とまったく同等の実験緑内障モデルは存在しないので、部分的視神経挫滅モデルや、血管収縮薬であるエンドセリン-1(ET-1)硝子体内投与モデルなどの緑内障類似モデルが実験に使用されている。一方、我々は光の干渉現象を利用して網膜の断層像を描出する臨床用装置である光干渉断層計(OCT)をラット用に改良し、実験モデルでラットの網膜神経線維層(RNFL)厚の経時変化を評価してきた。今回我々は、ラットの視神経部分切断モデルを作成した。視神経部分切断後には健常網膜の網膜神経節細胞(RGC)に二次性傷害が起こってくるので、OCTにてRNFL厚の経時的変化を週1回、モデル作成4週後まで評価し、OCTの最終撮影後に、ラット上丘へ蛍光色素投与しRGCの逆行染色を行い、網膜進展標本を作製してRGC数も評価するものであった。神経保護作用を有すると思われる点眼(tafluprost)投与群と対処群に分け、神経保護作用を確認することが目的であった。現時点で各4眼ずつ施行した。しかしながら視神経の露出操作での侵襲や部分切断の程度ばらつきがでるのか、同一郡内でも個体により障害の程度が大きく異なってしまい、現時点では点眼効果の有意差を確認できてはいない。モデル作成をより習熟し、視神経障害の程度をより均一化したうえで検体数を増やす必要があると思われた。また、臨床用OCTでは眼軸によって測定範囲が変わってくるので、眼軸による測定領域補正プログラムが使用されだしている。我々のラット用OCTでも眼軸による測定領域の補正プログラムの開発を現在進めている。研究課題/領域番号:26930003, ...