Epstein-Barrウイルス(EBV)がコードする小RNAEBERsの発現ベクターを作成した。すなわち、EBER1、EBER2各遺伝子を各々1コピー、4コピー、10コピー直列につないでpcDNA3プラスミドに挿入した。それらを正常腎上皮細胞MDCKに形質導入し、形質転換能および増殖能を検討したところ、EBER1とEBER2を各々4コピーずつ含むプラスミドを導入した場合、軟寒天培地におけるコロニーの形成能が最も亢進した(コントロールの4倍)。EBER1とEBER2を各々10コピーずつ含むプラスミドを導入した場合のコロニー形成能は、コントロールの1.8倍、EBER1およびEBER2を各々単独で導入した場合にはコントロールと比較して、有意なコロニー形成能の亢進は認められなかった。次に、無血清培地におけるMDCK細胞の増殖能を指標としてEBERsの形質転換能を評価した。結果は、各々のコピー数のEBER1+EBER2の組み合わせのいずれにおいても有意な増殖能の変化を認めなかった。また、放射線および紫外線に対する感受性も、同様に変化を認めなかった。EBERsは核内で二本鎖RNAを形成してプロテインキナーゼR(PKR)を阻害して細胞の増殖能を促進することが示唆されている。EBERsを試験管内で合成し、MDCK細胞のリボゾームRNAをコントロールとしてPKR活性にEBERsが及ぼす影響を検討した。すなわち、PKRが燐酸化することが判明しているアミノ酸配列ILLSESRRRIRの中央のセリンと放射性同位元素γ32Pを用いてEBERsによるPKR酵素活性を評価したところ、EBERsはPKR活性に影響しないという結果を得た。上咽頭がん組織におけるEBERsの発現とEBVがん遺伝子LMP1の発現...