本稿は,考古資料から食文化の諸相をより豊かに復元していくための基礎的作業として,平安時代の文献史料にみえるいくつかの食膳具と考古資料との対応関係を追究することにした。検討結果の主な内容は,以下の通りである。まず「瓷器」については,10世紀後半以前は「青瓷」を指すことが明らかになり,その実体は基本的に国産の鉛釉陶器と推察される。「白瓷」についても国産の灰釉陶器を指すものと考えるべきだが,灰釉陶器の生産の終焉後は灰釉陶器の系譜を引く無釉の陶器や,白磁を指す場合もあると判断された。次に「茶椀」については,唐代において茶を飲むのに愛用されたのが陶磁器であり,そこから日本でも輸入陶磁器一般を「茶碗」と呼ぶことになったものとみられる。また,『延喜民部省式』に「茶椀」なる器種名を設定されたのは,それが中国陶磁模倣の器種であったことが要因となっていることも明らかとなった。「葉椀」「葉皿」は,国産の施釉陶器に当てる見解が出されていたが,柏などの葉で作られた食器類であったと考えるのがふさわしい。よって,葉椀と瓷器(施釉陶器)は別物であり,施釉陶器の用途も葉椀にみられる祭祀具に限定する必要はない。語義未詳の食器名として知られる「様器」に関しては,基本的に考古資料でいうところの白色土器であるという結論が導かれた。様器の語の由来については,1つの仮説として薄様などの紙を載せて使う器であった可能性を提示した。そして,そのような使用が主に行われる肴や菓子を盛る器の意味であったのが,その用途にしばしば用いられていた白色土器に実体として固定化することになったものと推察した。The purpose of this paper is to identify archaeological types of anci...
神奈川県小田原市中里遺跡は弥生中期中葉における,西日本的様相を強くもつ関東地方最初期の大型農耕集落である。近畿地方系の土器や,独立棟持柱をもつ大型掘立柱建物などが西日本的要素を代表する。一方,伝統的な...
application/pdf古代銅印は,近年発掘調査による出土例が増加している文字資料の一つである。銅印については,これまでさまざまな視点からの集成作業や研究が行われてきたが,考古資料としての位置付...
application/pdf古墳出土の副葬品には,王権からの配布と地域での副葬という二つの異なる側面がある。配布と副葬は,王権と地域という異なる視点で古墳時代社会を評価したものともいえよう。本論では...
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古辞書にあらわれた鍋釜関係の語彙や鋳物資料に付された銘文,絵画資料などを検討して,鍋釜の名称の歴史的な変遷や地方的な呼称名の存在などを推論する。古辞書をみると,12世紀中葉~13世紀前葉ごろには,「釜...
application/pdf本論文は高知県の山間部に伝わった本川神楽を取り上げて、「宗教者の身体と社会」について考える端緒としたい。具体的には、本川神楽の担い手である太夫(たゆう)が伝承してきた知識...
私たち日本人は,日常,飯を食べるための碗を「お茶碗」(tea-bowl)と呼び習わしているにも拘わらず,こうした習慣が,どのような理由で,いつから行われていたのかについては,必ずしも明らかではない。日...
古代においても,私印は文書に捺されるのが最も普通の用途である。ところがまれに,焼成前の土器に捺した事例が見られる。生産窯や貢納主体の国や郡を表示するために印を土器や瓦に捺す例は少なくないが,私印を捺す...
今世紀になってから,有機化学の発展に伴い多くの合成の素材が開発されており,そのうちのいくつかは,絵具,ワニス,接着剤などの材料として用いられている。これらの新しい素材は,修復のみならず製作にも使われる...
装飾古墳の彩色原色を多用した特異な図文は,それが墓室に施されたこともあって強烈な衝撃を与えている。この図文は,呪術や鎮魂・僻邪という目的で施されたと理解されてきた。しかし図文を解釈する方法や根拠は,不...
本稿では,いわゆる開発以前が必ずしも未開発ではなかったという問題意識のもとに,干拓以前の潟湖がもっていた景観と機能を検討することを通じて,開発の意義を再考した。それと同時に,開発や災害などの歴史上の「...
application/pdf本稿は沖縄における鉄器加工のありかたを,王府に服属する職人組織を通して概観しようとするものである。 王府は古くから鍛冶奉行を設置してここで鉄器加工をおこなわせ,また,各間...
application/pdf日本における施釉陶器の成立は7世紀後半における緑釉陶器生産の開始を始まりとする。かつては唐三彩の影響下に奈良時代に成立した三彩(奈良三彩)を以て,緑釉と同時に発生したとす...
これまで,一般的に縄文時代の家畜はイヌのみであり,ブタなどの家畜はいないと言われてきた。しかし,イノシシ形土製品やイノシシの埋葬,離島でのイノシシ出土例から縄文時代のイノシシ飼育が議論されてきた。イノ...
本章では,土器の在地・搬入などの性格づけについての,モデルを提示する。製作物としての土器の属性を,「いつ・どこで・だれが・なにを・なにで つくったか」に区分して整理する。「いつ」は,時間の属性であり,...
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