個人情報保護のため削除部分あり考古学における伝世の位置づけをめぐっては、伝世鏡に代表される重要な学説がある一方、その存否の認定や歴史的解釈について議論の分かれるところも多い。本稿では古墳時代の鏡を対象として、伝世の存在、それがおこなわれた場所を推測するための基礎的な手続きを提示した。伝世が発生する本質的な要因としてその器物の保有主体が集団にあったことが重要と考え、また逆にそれを保持した集団あるいは集団と個人との関係が伝世の形態に反映すると推論した。古墳時代の鏡は、首長個人への帰属性とともに、首長を支える集団に本源的な保有主体があったと想定する。古墳に副葬された器物の中で、このような保有形態は鏡に特徴的なものであり、首長墳系列の動向などと比較して鏡と集団との関係を検討するための重要な手がかりとなる。During the Kofun period, bronze mirrors were often passed down from generation to generation in contrast to other items which were buried in the tomb of their owners. In this paper, I indicate that this custom was widespread in the Kofun period by showing the gaps between the time of the mirrors' production and the time of the tombs' construction and burial of the mirrors in the tombs. In some ...