本論ではまず芥川自身の自伝的な小説に対する考え方を明らかにし、次に『或阿呆の一生』の全五十一章で語られている出来事と芥川の実際の年譜を照らし合わせ、実生活における史実関係について検証する。検証には芥川の残した書簡や身近な人物らによる伝記、現時点で発表されている年譜などを使用する。その上で『或阿呆の一生』において芥川の心境を暗示していると見られる描写等について、他作品からの比較も交えて分析する。比較対象として晩年頃に書かれた芥川の他の小説、中でも内容に類似性が見られるものを利用する。それらを踏まえて考察し、『或阿呆の一生』という「自伝的エスキス」として書かれていた小説の在り方を改めて論ずるものである
本稿では、流布本『曾我物語』巻六「大磯の盃論の事」から始まる和田酒盛の物語を、絵入古活字本『曾我物語』の挿絵を端緒にして、舞の本『和田酒盛』や古浄瑠璃正本『わだざかもり』の各挿絵に注目して考察を試みた...
近世中期から後期には、『源氏物語』を中心とした平安朝文学にあらわれる、装束・調度・建築等を図で示し、注解を施した書が多く著された。本稿では、その中でも特に装束関連の図説書に注目し、江戸後期に成立した『...
華族は、明治の政治と社会が抱え込んだ矛盾の結節点に誕生した。それは、世襲の特権をどのように見なすかという問題と、深くかかわりを持っている。周知のように、明治維新新政府は武士の身分的特権を廃止し、四民...
尾崎翠作品には「片恋・失恋」のモチーフが頻出し、登場人物はしばしば三人のうち、どの二人も組になってゐないトライアングル」を形成する。登場人物たちのほとんどは「儚いワガボンド」であり、影と共に歩き、影と...
原本が未発見の『歎異抄』蓮如本における修正箇所の客観的観察は、作者・構成・書写時期の謎を解き、作者・顕智説と師訓篇・歎異篇入れ換え説を提言できる。蓮如の「教育的回心」後の『御丈』は特に吉崎時代に大きな...
現代詩史上画期的な詩集である田中冬二詩集『青い夜道』に収録された全詩篇の、綿密な註釈を目的とする。今回は第25篇目に当たる詩「山へ来て」(全11章句)の註釈である。作品に即しつつ、できる限り冬二の詩精...
金春権守作と言われる「昭君」は、古態を残す能とされながらも、後世の類型化のために、前後の脈絡がつかない筋書となっており、また、王昭君の説話を本説としながらも主題が不鮮明な鬼能に作能されている。本稿では...
仏書における了意の追随者たちは、了意が収載を忌避した日本の説話・巷間説話を積極的にとり込んでいく。人生の最晩年を向かえた了意は、この新しい流行を無視することなく、それをも克服しようとした。その活動が仮...
横光利一の『上海』に描かれた街「上海」とそこで生じた「出来事」は、「上海」から読みとられる連続性をもとに再構成しうるという特徴を持っていることに着目し、小説内部の構造を明らかにした。その結果、『上海...
近世の京都図の分析を通して、「洛中」と「洛外」の関係や、「洛外」のより詳細な性格などを明らかにすることを目的としている。「洛外」は、性格の異なる緑地とのうちが存在し、近世の京都図の中では農地の部分が...
石野政雄氏手拓本について影印叢書『好色一代男』シンポジウムコンピュータ国文学文庫紹介㉓新収資料紹介㊶新収和古書抄彙報平成8年度共同研究第十九回国際日本文学研究集会「セミナー原典を読む」利用者へのお知ら...
現在、源氏物語の注釈書といえば、大島本・定家本源氏物語などの青表紙本系統本のもの以外皆無と思われる状況であるが、そろそろ、この状況から解き放たれたい。自筆本の存在無く、数多くの伝本の総体がこの物語の真...
入江昌喜書き入れ本『海人の刈藻』を中心に、近世期における中世王朝物語享受の一端について検討する。昌喜は享保七〈一七二二〉年に生まれ、寛政一二〈一八○○〉年に没した大阪の町人学者である。『海人の刈藻』の...
藤原定家の下官集は定家仮名遣の基本資料として多くの研究があるが、書誌的な検討がまだ進んでいないように思われる。また、仮名遣史研究と和歌研究との二つの領域の情報交流も十分ではない。本稿は研究史を整理・評...
『日本書紀訓考』は明治十二年の刊記を持つ日本書紀神代巻についての注釈書(未完)であり、越後柏崎の関四郎太なる人物が著したものである。内容は本居宣長『古事記傳』に範を取り、全面的に依拠して、此に匹敵す...
本稿では、流布本『曾我物語』巻六「大磯の盃論の事」から始まる和田酒盛の物語を、絵入古活字本『曾我物語』の挿絵を端緒にして、舞の本『和田酒盛』や古浄瑠璃正本『わだざかもり』の各挿絵に注目して考察を試みた...
近世中期から後期には、『源氏物語』を中心とした平安朝文学にあらわれる、装束・調度・建築等を図で示し、注解を施した書が多く著された。本稿では、その中でも特に装束関連の図説書に注目し、江戸後期に成立した『...
華族は、明治の政治と社会が抱え込んだ矛盾の結節点に誕生した。それは、世襲の特権をどのように見なすかという問題と、深くかかわりを持っている。周知のように、明治維新新政府は武士の身分的特権を廃止し、四民...
尾崎翠作品には「片恋・失恋」のモチーフが頻出し、登場人物はしばしば三人のうち、どの二人も組になってゐないトライアングル」を形成する。登場人物たちのほとんどは「儚いワガボンド」であり、影と共に歩き、影と...
原本が未発見の『歎異抄』蓮如本における修正箇所の客観的観察は、作者・構成・書写時期の謎を解き、作者・顕智説と師訓篇・歎異篇入れ換え説を提言できる。蓮如の「教育的回心」後の『御丈』は特に吉崎時代に大きな...
現代詩史上画期的な詩集である田中冬二詩集『青い夜道』に収録された全詩篇の、綿密な註釈を目的とする。今回は第25篇目に当たる詩「山へ来て」(全11章句)の註釈である。作品に即しつつ、できる限り冬二の詩精...
金春権守作と言われる「昭君」は、古態を残す能とされながらも、後世の類型化のために、前後の脈絡がつかない筋書となっており、また、王昭君の説話を本説としながらも主題が不鮮明な鬼能に作能されている。本稿では...
仏書における了意の追随者たちは、了意が収載を忌避した日本の説話・巷間説話を積極的にとり込んでいく。人生の最晩年を向かえた了意は、この新しい流行を無視することなく、それをも克服しようとした。その活動が仮...
横光利一の『上海』に描かれた街「上海」とそこで生じた「出来事」は、「上海」から読みとられる連続性をもとに再構成しうるという特徴を持っていることに着目し、小説内部の構造を明らかにした。その結果、『上海...
近世の京都図の分析を通して、「洛中」と「洛外」の関係や、「洛外」のより詳細な性格などを明らかにすることを目的としている。「洛外」は、性格の異なる緑地とのうちが存在し、近世の京都図の中では農地の部分が...
石野政雄氏手拓本について影印叢書『好色一代男』シンポジウムコンピュータ国文学文庫紹介㉓新収資料紹介㊶新収和古書抄彙報平成8年度共同研究第十九回国際日本文学研究集会「セミナー原典を読む」利用者へのお知ら...
現在、源氏物語の注釈書といえば、大島本・定家本源氏物語などの青表紙本系統本のもの以外皆無と思われる状況であるが、そろそろ、この状況から解き放たれたい。自筆本の存在無く、数多くの伝本の総体がこの物語の真...
入江昌喜書き入れ本『海人の刈藻』を中心に、近世期における中世王朝物語享受の一端について検討する。昌喜は享保七〈一七二二〉年に生まれ、寛政一二〈一八○○〉年に没した大阪の町人学者である。『海人の刈藻』の...
藤原定家の下官集は定家仮名遣の基本資料として多くの研究があるが、書誌的な検討がまだ進んでいないように思われる。また、仮名遣史研究と和歌研究との二つの領域の情報交流も十分ではない。本稿は研究史を整理・評...
『日本書紀訓考』は明治十二年の刊記を持つ日本書紀神代巻についての注釈書(未完)であり、越後柏崎の関四郎太なる人物が著したものである。内容は本居宣長『古事記傳』に範を取り、全面的に依拠して、此に匹敵す...
本稿では、流布本『曾我物語』巻六「大磯の盃論の事」から始まる和田酒盛の物語を、絵入古活字本『曾我物語』の挿絵を端緒にして、舞の本『和田酒盛』や古浄瑠璃正本『わだざかもり』の各挿絵に注目して考察を試みた...
近世中期から後期には、『源氏物語』を中心とした平安朝文学にあらわれる、装束・調度・建築等を図で示し、注解を施した書が多く著された。本稿では、その中でも特に装束関連の図説書に注目し、江戸後期に成立した『...
華族は、明治の政治と社会が抱え込んだ矛盾の結節点に誕生した。それは、世襲の特権をどのように見なすかという問題と、深くかかわりを持っている。周知のように、明治維新新政府は武士の身分的特権を廃止し、四民...