華族は、明治の政治と社会が抱え込んだ矛盾の結節点に誕生した。それは、世襲の特権をどのように見なすかという問題と、深くかかわりを持っている。周知のように、明治維新新政府は武士の身分的特権を廃止し、四民平等の社会を作った。その明治政府が、日本の貴族である華族を形成したのである。そこには、特別の理由がなくてはならない。 フランス革命以降、西欧において貴族は社会に深く根を張った自然的生成物ではもうなかった。しかしながら同時に、貴族は過去のたんなる遺物ではまだなかった。それは政治的作為を加えても、貴族を維持したり新たに作り出すような存在であった。ヨーロッパで貴族廃止令が何度も出されているにもかかわらず、貴族が復活するのはなぜなのか。このことは、明治政府の担当者の頭を悩ました。貴族のこのような過渡期的性格を一方で念頭に入れつつ、他方で日本の現実を直視したところに生まれたのが、高度に政治的人工物である華族という政治的身分であった。それは、社会的実力を国家が承認する貴族ではなく、国家権力によって人為的に作り出された社会階級ということを意味していた
現代詩史上画期的な詩集である田中冬二詩集『青い夜道』に収録された全詩篇の、綿密な註釈を目的とする。今回は第25篇目に当たる詩「山へ来て」(全11章句)の註釈である。作品に即しつつ、できる限り冬二の詩精...
この度、細江光氏により、偽造と確認できる川端康成宛の太宰治の葉書が発見され、「偽造太宰治書簡」の資料が紹介されている。偽造とされる「川端康成宛葉書」と、昭和一一年六月二九日付「川端康成宛書簡」の宛先、...
近世中期から後期には、『源氏物語』を中心とした平安朝文学にあらわれる、装束・調度・建築等を図で示し、注解を施した書が多く著された。本稿では、その中でも特に装束関連の図説書に注目し、江戸後期に成立した『...
この小論は、『古事記』の所伝の成り立ちに考察を加えたものである。仲哀天皇の崩御をめぐる所伝が類型に則って成りたつことをまず指摘する。その所伝に通じる『日本書記』の所伝は、その類型に合わず、仲哀天皇の崩...
本稿は、戦後日本のマルクス主義経済学の第一人者であった宇野弘蔵(一八九七―一九七七)の東アジア認識を、主に戦時中に彼が執筆した二つの広域経済論を手掛かりに検討する。「大東亜共栄圏」は、「広域経済を具...
鈴木三重吉は、『綴方読本』(中央公論者 一九三五年十二月)を纏め、三重吉の綴方指導(実践)の完成を示す。著書の前半に掲載された子どもの綴方はいずれも雑誌「赤い鳥」に応募されたものであり、三重吉が子ども...
近世の京都図の分析を通して、「洛中」と「洛外」の関係や、「洛外」のより詳細な性格などを明らかにすることを目的としている。「洛外」は、性格の異なる緑地とのうちが存在し、近世の京都図の中では農地の部分が...
満州は、かつて政治的には日本と「特殊の関係」を持つ地域とされた。また「赤い夕日」の「郷愁」に象徴されるように、日本人にとって「特殊の感情」を懐かせる土地でもあった。この特殊の関係・感情とはなにか、ま...
日本の「大衆文学」を代表する『大菩薩峠』の著者、中里介山の独自の仏教思想を検討する。まず、彼の「文学」概念が明治初・中期の洋学者や啓蒙主義者たちが主張した広義の「文学」の枠内で、感情の表現をも重んじ...
菊人形という人形がある。等身大で、菊をまとった、人間のような肢体をもつ人形である。見ようと思えば、菊の季節である秋に日本のいたるところで見ることができる。現代の人々は、菊人形をどのように見ているのだ...
全ての分野にジェンダーの視点 : UNDP本部のWID基金担当官から話を聞く : 政治的意志は不可欠世界のNGOの動静 CONGO第1副委員長レズリー・ライトさん初来日 : 北京+10を巡って社会制度...
『古事記』は応神天皇の条に、天之日矛が新羅から、奥津鏡・辺津鏡を含む八つの天津宝を持ってこの国に渡来したという伝説を、挿入している。その奥津鏡・辺津鏡とは、何のためのものだったか。 この問いは、他の...
朝鮮王朝末期の王妃「閔妃」は韓国および日本を通じ、これまで多くの資料と作品の中で語られてきた。が、現在一般的に流布している「閔妃」の写真から喚起されるをもってしてそれらの資料と作品を読んでいいのだろ...
恋愛の概念は、世紀末の日本において近代的繊細さが発展していく上で、大切な構成要素であるという認識が高まってきている。本論は、一八九五年から一九〇五年までの間に発行された総合雑誌『太陽』と同人雑誌『女...
[50円バザーを復活] 円より子私と老後 吉富典子春合宿だより子供が書いた「おとうさんとおかあさんのこと」母親が書いた「私と離婚」家計簿公開六月四日にバザー開催―読んでみませんか(3)― 『100万回...
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