3 mm線量当量の測定・評価は,現在の個人被ばく管理では必須とはされていない。これは,「3 ミリメートル線量当量は,(中略)測定の義務を原則として課さない」及び「通常,1 センチメートル線量当量又は70 マイクロメートル線量当量のうち,放射線の種類やエネルギー等を考慮して適切と判断される方をもって眼の水晶体の等価線量の評価値とすることができる」とする1999 年4 月の放射線審議会基本部会の「外部被ばく及び内部被ばくの評価法に係る技術的指針針」を基礎とし,2001年度から施行された放射線防護関係法令に基づく。測定対象としての3 mm 線量当量の撤廃(あるいは免除)は,一般的な作業場の放射線状況や当時の放射線測定器の仕様に鑑み,そのモニタリングの要件を整理し,単純化した結果と言えるものであったが,高エネルギーのβ線による被ばく状況においては,この単純化は線量の過大評価をもたらす。保健物理学会水晶体の放射線防護に関する専門研究会では,これまでに専門研究会で議論をされた内容を踏まえ,報告を行ってきた。本稿では,追加報告として,2000 年度以前にわが国で行われていたβ線3 mm 線量当量の測定評価の方法について紹介するとともに,福島第一原子力発電所の事故復旧作業の現場などのような90Sr–90Yβ 線による高線量(率)の放射線環境下での適用を念頭に,その測定及び評価の必要性と具体的な対応について述べる