本稿は、現代日本語における複合動詞(例:「切り倒す」)と「V1+V2」型複合動名詞(例:「立ち読み」)の生産性の面での違いを示し、この違いを引き起こす要因を考察したものである。複合動詞と「V1+V2」型複合動名詞は、V1 とV2 の意味関係によって、手段関係、付帯状況関係、並列関係、原因関係、補文関係の5 つのタイプに分けられる。それぞれの意味関係を表す語は生産性(=実際に存在する語の多さ)の高さが異なる上、生産性の高さが逆になる傾向が見られる。本稿はこのような傾向を手がかりとして、複合動名詞における一番生産性が高い「付帯状況関係」のタイプに対象を絞り、複合動詞の「付帯状況関係」のタイプとの対照を通じて、両者の違いに対する説明を試みた。アプローチとしては、動詞の意味構造を一般化できる語彙概念構造(Lexical Conceptual Structure, 略としてLCS)の枠組みを利用した。複合動詞と複合動名詞の両方とも「他動性調和原則」を満たしているが、複合動詞のV2 には様態が指定されていないのに対して、複合動名詞のV2 には様態が指定されているということを明らかにした。本稿は、複合動詞と複合動名詞はいずれも複合語の形成における項構造レベルの制約を受けているが、意味構造レベルの違いによって両者の違いがもたらされると主張する。これは、日本語の複合動名詞の形成の動機付けが何なのかという問題の解決にもつながっている。Japanese is known to be rich in compound verbs consisting of two verbs joined together, such as kiri-taosu (cut and knock.down). The ...