一部の再生不良性貧血(再不貧)患者血清抗体によって認識される白血病細胞株UT-7由来の80kD蛋白を同定するため、免疫沈降により精製したこの蛋白のアミノ酸配列を質量分析を用いて同定した。その結果、この蛋白は細胞膜関連蛋白のモエシンであることが判明した。患者血清中の抗モエシン抗体価をELISA法により測定したところ、再不貧患者43例中20例(46.5%)が陽性であった。抗体の陽性率は、自己免疫性再不貧のマーカーであるPNH型血球陽性の再不貧患者では22例中14例(64%)であったのに対し、PNH型血球陰性の再不貧患者では18例3例(17%)のみであった。一方、UT-7由来のcDNAライブラリーのスクリーニングにより同定した蛋白diazepam-binding inhibitor-related sequence-1 (DRS-1)に対する抗体はPNH型血球陽性再不貧例84例中の32例(38.1%)に検出された。DRS-1のcDNA断片に由来するGST融合蛋白を作成し、各々に対する抗体の有無を決定したところ、抗体陽性者の約半数において、173-198位のペプチドに対する抗体が検出された。HLA-DR15蛋白と結合するT細胞エピトープのペプチドを合成し、DRS-1ペプチド特異的T細胞の前駆細胞頻度をELISPOTアッセイで調べたところ、抗DRS-1抗体陽性でDR15を持つ患者では、検討した2例の両例においてDRS-1特異的T細胞の前駆細胞が高頻度に存在することが示された。このDRS-1ペプチドによって患者末梢血単核細胞から誘導したDRS-1特異的CD4陽性T細胞は、DR15陽性白血病細胞株KH88を用量依存性に傷害した。したがって、抗DRS-1抗体を持つHLA-DR15陽性再不貧患...