HT1080細胞のI型コラーゲンおよびファイブロネクチン(FN)上での細胞運動はMMP阻害剤BB94により抑制され、ECM分解の減少、細胞接着斑の過形成と運動極性の喪失が認められた。一方、MT1-MMPの過剰発現はECM分解、細胞運動と細胞接着斑の代謝回転を誘導し、阻害変異体の発現でその抑制が認められた。HT1080細胞のBB94処理は細胞接着により誘導されるERK活性化を抑制した。以上の結果からMT1-MMPは細胞接着により誘導されるERK活性化を調節することにより細胞接着斑の代謝回転と細胞運動を制御していることが示唆された(T. Takino et al., Experimental Cell Research,2006)。 細胞運動時、MT1-MMPは細胞接着斑の集積と代謝回転が頻繁に起こる運動先端部の内側でECMを分解していた。細胞接着斑におけるMT1-MMPの機能に着目し、FAKの細胞接着斑標的ドメインをMT1-MMPとMT1-MMPの阻害変異体に付与し、細胞接着斑におけるMT1-MMPの役割を解析した。細胞接着斑に標的したMT1-MMPはFNへの接着後、迅速に細胞接着斑でFNを分解した。 細胞接着斑に標的したMT1-MMPの阻害変異体はMT1-MMP発現細胞におけるFN分解と細胞運動、3次元ECMへの細胞浸潤を顕著に抑制した。以上の結果から、細胞接着斑におけるMT1-MMP機能の重要性と、その活性阻害ががん浸潤・転移抑制に効果的であることが示された(T. Takino et al., Cancer Research, 2007)。Membrane-type 1 matrix metalloproteinase (MT1-MMP) has been implicat...