血管傷害モデルにおいて、HO-1は酸化ストレスにより誘導される細胞傷害/細胞死を抑制することが明らかにされた。同時に、HO-1による細胞保護作用は、HO-1の発現量や発現の局在、さらに発現時間などにより精密に調節されている可能性が示唆された。特に、細胞接着に依存する細胞ではHO-1の過剰発現が細胞接着因子の発現低下と細胞死を誘導する可能性も明らかにされた。末梢血単球の内、CCR2 CD16^亜群が恒常的にHO-1を産生し、血管内皮の機能維持に重要な役割を果たしていることが明らかにされた。さらに、急性炎症性疾患ではこれらの単球亜群が増加、過度の炎症による組織/臓器傷害の抑制に関与していることが示唆された。蛋白尿を伴う糸球体傷害では、尿中蛋白量に比例して尿細管によるHO-1 mRNA発現が誘導された。種々の腎疾患の中でも、病態の差異に応じてHO-1 mRNAの局在は特徴的なパターンを示した。腎疾患におけるHO-1 mRNA発現の局在とその程度を評価することにより、新たな視点で病態解析が可能となった。慢性気道炎症では呼気中CO濃度が増加することが知られている。原発性肺高血圧症や二次性肺高血圧症症例での肺組織を用いた検討では、肺胞マクロファージのみでなく、気道壁や毛細血管内のマクロファージにおいてもHO-1蛋白発現が認められた。このことから、気道炎症を伴う種々疾患においても多様なレベルでHO-1が炎症の制御に関わっていることが示された。ステロイド投与により単球表面のHb・Hp受容体(CD163)発現が著しく増強することが明らかにされた。また、CD163発現を増強した単球はHb・Hpの取り込みが亢進、IL-10のみでなく、HO-1の産生が有意に増加した。これらの事実は、血管傷害のみでな...