本研究は、成人期にがんできょうだいと死別した人の悲嘆と、家族システムの変化を明ら かにするものである。対象者は20 ~ 50 歳代の男女7 名で、半構成面接をし、質的研究手法 でまとめた。 結果として、9 カテゴリー、12 サブカテゴリー、28 概念が抽出された。きょうだいは家族 システムのサブシステムであり、【育ち合い】の関係で成長し、結婚で互いが生殖家族を持っ て分離する。一方で成人期での発病と死別は、家族システムおよびきょうだいシステムの凝 集性を高め、【一身で世話する】ことになる。患者のがん発病は、【微妙な位置の身びいき意識】 という、小姑の立場からの身びいき意識を生み出し、定位家族、生殖家族メンバー間の軋轢 や葛藤を生み出した。 また、きょうだいの悲嘆は【一様でない哀しみ】であった。それは育ち合ってきたコンボ イ(護送船団=立場の弱い者に配慮しながら助け合う)としての関係性の喪失であり、自己 存在を証明してくれる人を喪うことであった。この悲嘆は社会的に認知されにくく、さらに きょうだい自身が【老親の取り持ち役】を優先して自分の悲嘆を封印してしまうことから、 2 重の意味で悲嘆を見えにくいものにしていた。一方で、老親への気配りは、新たな役割獲 得であり、それが、悲嘆を癒している面があった。さらに、きょうだいは遺伝子を共有して おり、がんの発病への危惧としての【血の怯え】も見出された。 全体として、きょうだいへの看病と死別の過程は、成人し分離し生殖家族が中心だったきょ うだいの家族への視座を、生殖家族から定位家族へ回帰させるものであった。それは老親へ のコミット、きょうだいの絆の再凝集の形であらわれていた