個人情報保護のため削除部分あり「君主鑑」とは、君主に政治道徳上の教訓を与える、西欧世界における文学の一ジャンルであり、イスラム世界に見られる同様の性格を持つ作品群も、研究者によってそう呼ばれている。本稿の目的は、一四世紀インドのデリー政権において書かれた君主鑑作品である Fatawa-yi Jahandar に見られる君主論、理想の君主像の抽出である。この作品の理想の君主像は Ibn al-'Arabr の完全人間論などのイスラム神秘主義思想の影響を受けており、統治と信仰という正反対の行動を両立できる君主は聖者の最高位である qutb の位にあるとされている。理想の君主像のこのような特微は、当時のインドにおけるスーフィー・シャイフの社会的影響力の強さを窺わせると同時に、君主が世俗と宗教の双方の権力者として権威を高められていく過程を示していると言える。Mirror for Princes is one genre of medieval European literature which consists of advice to rulers about rulership and practical ethics, and this name is applied to same kind of literary works of Islamic world. While the political and practical sides of mirror-type works have been used in many studies such as a series of A.K.S. Lambton's works, the ethical side of the...