『平家物語』は天台座主明雲の配流を物語るにあたって、唐の一行阿闍梨の故事を引き合いに出す。この一行説話が、明雲流罪の悲劇を印象づけるためのアレゴリー(寓喩・諷喩)であり、「一行阿闍梨」が明雲の隠喩となっていることは、これまで自明のこととされてきた。しかし、延慶本を読むと、一行説話の登場人物の構図と明雲流罪事件の構図とのあいだには大きなずれがあり、もとの出来事とアレゴリーとの相似形が意図的に崩されていることがわかる。また、一行説話には、「三摩耶戒」や「九曜ノ曼荼羅」など、寺門や真言を連想させる記号が登場し、「一行阿闍梨」のイメージが延暦寺僧の明雲とは相容れないことが示されている。そうすることで、延慶本には、山門の創り出した西光を元凶とする明雲流罪事件像を相対化する余地が生まれているのである。 The Heike-monogatari quotes a historical tale about Ichigyou-ajari, describing the Myoun exile incident. It has been considered to be an allegory and Ichigyou-ajari is a metaphor of Myoun. However, in Engyoubon Heike-monogatari, there are differences in the character relationship between the Myoun exile incident and the historical tale. The difference enables us to speculate that the allegory is i...
本稿は、中古日本語におけるテハベリキ形について、タリキ形・キ形との用法の違いを概観したものである。そのために、まず、先行研究を検討しながら、テハベリキ形がどのような意味を表す可能性があるのかを考察した...
我が国の外国語語彙学習(特に中学校・高等学校)において、日本語訳の機械的な丸暗記に過度に重点が置かれている感は否めない。しかしながら、種々の単一語及び連語表現の意味のからくりを概念的見地から解明し、実...
publisher奈良平安宮廷の貴族たちに、懐かしい古謡として愛唱されていた催馬楽は、神楽歌と並び称されるような古色を感じさせる歌詞をもっている。後白河院は梁塵秘抄口伝集で、催馬楽は「大蔵の省の国々の...
本歌取りを得意としていた藤原定家は、本歌を巧みに想起させるように本歌取りの歌を創作している。一方で本歌との違いを明かにし本歌取りの歌と本歌とが別の歌であることをも示している。それにより、読み手は本歌と...
『大仏供養物語』は、『お伽草子』の中で法然が登場する物語の一つである。本論の骨子は、『大仏供養物語』の伝本である「神宮本」と「赤木本」を中心に検証することで、中世の物語の中でどのような法然思想が形成さ...
筝曲の「段物」には、一種の重音奏法といえる「掻手」、「割爪」の技法がよく現われるが、この研究は、それらの技法が、単旋律音楽の中にあって、どんな意味をもっているのか、またどんな機能を果たしているのかを分...
本稿は「紀貫之論」の一環として書かれている。貫之という歌人には、単に三一文字の歌詠みというだけではおさまりきれない何かがあり、まただからこそ『古今和歌集』仮名序や『土佐日記』という仮名日記の執筆をも試...
本小論は、トプカプ宮殿美術館が所蔵する4冊の詩画帳(サライ・アルバム)の1冊(登録番号H.2153)のフォリオ98aに貼られている「上申の書」に関するものである。この「上申の書」は、15世紀前半のティ...
埼玉県越谷市「イギリス」というカタカナ語は日本で作られて翻訳語として用いられてきたが、それに正確にあてはまる英語の語彙はなく、日本がその遠来の他者と出会ってからその対象をどのように理解してきたかを探る...
『伊勢物語』の主人公とされる在原業平は各地に様々な伝説を残している。『伊勢物語』を基に、謡曲や古註釈の解釈、地名の由来などを含み、その土地に根差している。東北から九州まで広い範囲を舞台にした『伊勢物語...
日本人キリシタン・不干ハビアンの抄訳『天草版平家物語』(1592年、天草刊行)は、ローマ字表記(横書き)の特異な姿をもつ平家物語である。冒頭部「祇園精舎」の段を欠くこと、キリシタンの神を思わせる「天道...
『伊曾保物語』は十六世紀後半、キリスト教の宣教師によって伝えられたイソップ寓話集の和訳本であり、国字文語体で書かれ、古活字本、整版本で出版され、一般に広く普及した書物である。この書物はイソポの伝記と寓...
読み本系『平家物語』が引用する文書は、古記録等からはわからない当時の状況を知る貴重な手掛かりとなり得る。安元三年(一一七七)五月の明雲流罪事件の叙述でも長門本・『源平闘諍録』・『源平盛衰記』に計五種類...
本稿では、ルイス・キャロル作Alice’s Adventures in Wonderland とその日本語版3編の翻訳分析を通して、英語では主に動詞や名詞で表わされていた音声や様態が、日本語では主に副...
近世歌舞伎脚本の国語史的な資料性を検討する基礎作業として、黙阿弥の世話物におけるハ行四段活用動詞の音便形を取り上げ、計量的に調査した。その結果、促音便が圧倒的である同時代の他のジャンルに比べて、歌舞伎...
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