ゲキショウ カンフゼン ニ タイスル ホジョテキ カンイショク : ジコカン サイセイ ノ ヨソク ト サイセイ ユウドウ

ウィルス性肝炎や薬剤中毒、または毒性キノコの誤食などが原因で発症する劇症肝不全は致死率の高い疾患であり、現在では肝移植術が救命率50－70％を示す最も有効な治療法と考えられる。一方、肝は高い再生能力を有する臓器であり、肝不全の急性期を乗り切れば病的肝が再生し肝機能が回復する可能性がある。そこで近年、病的肝の一部を切除しそのスペースに部分肝グラフトを移植するという補助的同所性部分肝移植術(Auxiliary partial orthotopic liver transplantation: APOLT)が優れた治療法として注目されている。この治療法の大きな長所は、肝不全の急性期を移植肝で補助し、かつ自己肝再生の可能性を温存するため自己肝の機能が回復した際には移植肝から離脱でき、副作用のために移植後患者の大きな負担となる免疫抑制剤の継続使用を断ち切ることが可能となる点である。こうした発想から、最近国内外の移植施設で少数例の試みがなされているが、実際には移植後に自己肝の再生が見られない症例も報告されている。一方、本治療法には通常の肝移植に比べて高度の手術手技が要求され、また自己肝と移植肝との間での血流競合や相互反応によるグラフト肝機能不全の危険性も指摘されており、自己肝温存の適応が問われている。この解決のためには、移植前の時点で病的自己肝の再生を正確に予測できる方法の確立が重要と考えられる。 ...このような背景を踏まえて、本研究では、大型動物を用いた急性肝不全に対するAPOLTモデルを作製し、病的自己肝の再生過程における再生関連因子の変動や肝の組織学的変化などを解析することにより移植術前における自己肝再生の予測診断法を確立することを目的とする。さらに、これら再生関連因子を操作し肝再生を促進するというアプローチから、劇症肝不全に対する新しい根本的治療法としての再生誘導法について研究を行う。研究代表者: 高田泰次研究課題番号: 1147023