Soseki Natsume ‘Evening that Arrives at Kyoto’ : Longing for Pre-Modern Age

夏目漱石『京に着ける夕』（明治四〇年四月）は、漱石が朝日新聞に入社し、職業作家として最初に書いた小品である。これまでの研究史では、「随筆」として漱石の実体験と連動するかたちでの論及が主であったが、本論ではその「創作」的側面に言及する。その上で、近代文明を相対化する視点を摘出し、漱石文学を貫く西欧近代への懐疑という問題系を内包した作品であることを明示する。特に、「汽車は」で始まる小品が、「社頭に鶴」という俳句で終わる点に注目し、の喩としての「汽車」が向かうと、に誘われた「余」が向かうという二つの空間の意味を明らかにしつつ、から疎外され神話的表象に収斂する小品のを提示するものである。創作暗い國遐かなる國近代近代以