第3巻は、アーナンダ、マハー・カーシャパ、プールナ・マイトラーヤニープトラの三人の弟子たちによるマンジュシュリー(文殊)の「神通の奇蹟(神変)」に関する回想からなる。文殊の鉢による奇蹟を阻止するために悪魔が悪形の比丘たちを化作し、それを契機に文殊が悪魔に「仏陀の教説」の意味を解説する。また、文殊を告発するマハー・カーシャパの姿が十方の無量世界に現出され、それを契機に文殊の様々な教化方法が示される。さらに、文殊が自らが化作した異教徒たちとともにニルグランタ(裸形行者)の弟子となり、最終的には彼らを仏教に誘導するなど、前巻から続く、文殊の神通による奇蹟と教誡による奇蹟がさまざまなプロットによって描かれていく。いずれの場合も、文殊の神通は、教誡の奇蹟に導くための演出なのである。釈尊は「神通の奇蹟」を極力控えたとされるが、大乗とくに文殊系の経典では、この「神通の奇蹟」を方便として駆使し、「空・不二」の思想を基盤とする大乗を称揚するのである。文殊師利神変阿難大迦葉富楼那ニルグランタサティヤカ文殊師利神変阿難大迦葉富楼那ニルク゛ランタサティヤ