口腔保健指導を受けてもそれを実行しない又は実行できない高齢者や自覚症状があっても歯科受診をしない高齢者は多く、多くの人が不健康な口腔状況にあることが報告されている。その一因は、指導内容が、高齢者の特性やその実際の行動に基づいておらず、医療者主体で検討されていたところにもあると考えられる。本研究は口腔保健行動の口腔健康における役割を検討することを目的とし、次の二段階の調査から構成された。すなわち、第一段階の調査では質的研究によって高齢者が実施している口腔保健行動を抽出し、第二段階の調査では、第一段階の結果をふまえ作成した質問紙を用いて口腔保健行動と口腔健康の関連を量的に検討することを目的とした。本研究は今後、同様な調査を重ね対象を増やし検討する予定であるが、第一次の調査が終了したので、その結果を報告する。高齢者大学で開催された口腔健康調査への参加に同意した60歳以上の高齢者94人を対象として、半構成的面接を行い保健行動を抽出し質問紙を作成した。作成した質問紙を用いて構成的面接を行い地域で開催した口腔健康調査への参加に同意した60歳以上の高齢者66人(男性25人、女性41人)を対象として、口腔保健行動と対象者の背景、口腔疾患との関連を検討した。対象者のほとんど(63人、95.5%)が配偶者または家族と暮らしており、52人(78.8%)が散歩など体を動かす趣味をもち活動的であった。現在歯散は平均22.7±8.0本、未処置う歯数は平均1.3±2.7本、CPITNは平均2.5±1.3で全国平均と比較し良好な口腔状態であったが、半数以上の37人(56.1%)が口腔に関する何らかの問題を持っていた。口腔保健行動として、口腔清掃に関しては、全員が1日1回以上歯磨きを行っていて、指導されたブラ...