末梢血リンパ球に放射線を照射すると、転座と2動原体が理論的には同率に誘発されるはずであるが、前者は後者よりやや多く誘発されると報告されている。我々はその機構を調べるためにx線を末梢血リンパ球に3Gy照射し、2番と4番染色体が関わる転座と2動原体の相対頻度をギムザ染色法と染色体蛍光着色法で解析した。まず、ギムザ染色標本で948個の分析可能な分裂中期細胞を無作為に選んだ。それらを染め直して染色体着色法で検出した228個(転座123:2動原体105)の単純相互交換型異常について、交換に関わった染色体の切断再結合部位を基準として3群に分類し、各群ごとに転座と2動原体の相対頻度を調べた。交換に関わった染色体の両方共において動原体を持たない方の断片の長さが動原体を持つ方より短かったものは77%(175個)あり、この群では相互転座と2動原体の数は89と86で。それらの相対頻度に有意さがなかった。交換に関わった染色体の両方において無動原体断片の長さが有動原体断片により長かったものは3%(7個)あり、相互転座と2動原体の数は4と3で、統計的解析が可能な数ではなかった。ところが残りの20%(46個)を占めるヘテロ型(一方が長い有動原体断片+短い無動原体断片、他方が短い有動原体断片+長い無動原体断片)起源のものでは相互転座数が30で、2動原体数の16より有意に多かった。放射線により相互転座が2動原体よりやや多く誘発されるのは、長い有動原体断片が長い無動原体断片に、短い有動原体断片が短い無動原体断片に結合する傾向があることによることが明らかになった。日本放射線影響学会第46回大