石田三成にみる豊臣大名の形成と豊臣共同体構想 : 「血と知のネットワーク」形成と平和国家構想

本稿の目的は，石田三成の天下構想＝国家構想を，三成の旗印「大一大万大吉」に示されている政治思想に依拠しつつ，豊臣「家」と豊臣「政権」との関連で考察する。本稿の主要論点は，以下のとおりである。 第1に，三成は，《血のネットワーク》の形成によって，平和国家を構築しようとした。具体的には，これは，豊臣「家」と有力大名のそれぞれの「家」と縁戚関係＝血縁関係を構築し，豊臣「家」の強化＝権力の増大を図る，という方法によって達成される。 第2に，三成は，《知のネットワーク》の形成によって，豊臣「政権」の強化＝権力の増大を図り，「政権」＝政治システムによって天下人・豊臣秀吉の豊臣「家」を支えるとともに，天下の全大名を指導，管理し，同時に天下万民の生命と生活を保証しよう，と考えた。具体的には，これは，上杉「家」，毛利「家」，宇喜多「家」など有力な豊臣大名との連帯意識＝共同意識によって「知」力＝政治力・経済力の向上を通じて達成される。 この2つのネットワーク形成によって，三成は諸大名，そして天下万民が自らの生命を大切としながら，自分に与えられた仕事に励み，自分の家族や隣人に愛を注いで生きて行ける社会，国家を実現しうる，と考えたのである。 それゆえ三成の天下構想＝国家構想は，《血のネットワーク》の形成と《知のネットワーク》の形成という二重の意味での《「ち」のネットワーク》の形成によって，《生命の体系》を構築することにあった。それによって三成は，「武」力社会から「ち」力社会への平和裏な社会転換＝パラダイム転換を実現しうる，と考えたのである。そこに三成の旗印「大一大万大吉」に示される政治思想としての《天の政治思想＝公の政治思想＝愛の政治思想》が具体化された三成の天下構想＝国家構想の真髄が如実にあらわされているのである