本稿は、2010年5月7日ロンドン大学東洋アフリカ学院(School of Oriental and African Studies) での講演のために準備されたテクストに若干筆を加え、論文として仕上げたものである。テクストは、当初日本語で書かれたものを、著者のコントロールのもとで、薄井尚樹博士(シェフィールド大学)が翻訳するというかたちで成立した。本論が問題にしたのは、明治維新以来の日本の近代化を支えた基本的な虚構的言説の交替である。高橋由一の造形活動を支えた国家の神話は、森鴎外にも触れつつ論じたように、明治後半以降旧来の家共同体との連結を失うことによって、空洞化していったが、その後『白樺』 派やその周辺の芸術家・知識人などによって語られた大正期の個人の理念も、同時期の西洋文化の模倣という性格を脱しきれず、昭和期にはまた別な国家という虚構に吸収されていった。新たな神話の形成に参与した日本画家・川畑龍子の作品に見られる国家の過剰な美化は、かえって根を失った人間存在を際立たせている。そうした喪失感は、同時期の保田與重郎の民族的伝統の称揚の背後にも見られるのだが、この批評家と同世代に属する戦後美術の旗手・岡本太郎においても、その「主体性」は、independency と訳されているが、それは人間存在の基盤喪失を際立たせようと意図してのものである。論究は、この喪失によって開かれてくる場所、いってみればindependencyのinが、有用性の徹底化としての近代化の必然的帰結であり、私たち自身に課せられた歴史的問いでもあることを示して、結びとした
application/pdf本稿では、従来個別の地域に即して蓄積されてきた神職組織研究を相互比較することによって、近世の神職組織の存在形態とその特質を解明した。対象は、これまでの研究が触頭―触下とい...
農書は、わが国では元禄時代(1688~1703)を境に上層農民や下級武士等によって著述されてきた農業技術書である。若松城下近くの幕内村(会津若松市)の肝煎佐瀬与次右衛門は、貞享元年(1684)に『会津...
フランスの"皆保険"体制は1999年7 月27日法で創設された「普遍的医療給付」(Couverturemédicale universelle : CMU)制度によって2000年1月1日から施行された...
本稿は、中世日本における外来技術の伝来に関して、それを可能にするための条件ないし背景や、伝来技術の移転についての試論である。第一に、国家や地域権力といった公権力が、技術の伝来に果たした役割を考察した。...
本稿では、北陸の「技術文化」の諸事例を紹介し、地域社会における蘭学知識との影響関係を確認するため、加賀藩域を中心とした概括的な検証を試みた。江戸後期、「科学技術」をめぐる諸制度・研究・交流及び器具や製...
八世紀後半から九世紀前半にかけて,光仁・桓武王権は東北蝦夷の「反乱」に対し,大規模な軍事行動を起こした。いわゆる三十八年戦争である。王権は軍事的・政治的拠点として胆沢城,志波城,徳丹城を建設した。同じ...
太閤記物の流行は文化元(一八〇四)年に読本『絵本太閤記』が絶版を命じられたことで一時期下火になるが、幕末維新期に再び隆盛し、『絵本太閤記』の影響を受けた錦絵や切附本が次々と出版された。近年は武者絵や太...
本論文は、一九世紀初頭における日光をめぐる歴史意識について、植田孟縉の『日光山志』と竹村立義の『日光巡拝図誌』をもとに論じるものである。『日光山志』は五巻五冊からなり、天保七年(一八三六)に刊行された...
お椀の素材となる白木の椀木地を作ってきた木地屋は歴史的には近世以前に遡る古い職業であり、その彼らが使ってきた道具ろくろも同様に古い歴史を持つ。彼らは日本各地の山中で移住生活を送っていたといわれるが、そ...
本稿は、早大教授であった故深谷博治氏が所蔵していた史料群の整理作業における中間報告である。第一の課題は、その史料群構造と現在の保存環境に至るまでの来歴を明らかにすることである。第二は、更に一歩進めて記...
application/pdf古墳時代後期の6世紀に日本列島の各地で造営された墳丘長60メートル以上の大型前方後円墳の数を比軟すると,他の諸地域に比べ関東地方にきわめて多いことが知られる。律令体制下の...
application/pdf藤根村という東北の貧しい農村に生まれた高橋峯次郎という一教師をとおして、彼が生きた明治・大正・昭和の三時代とはどういう時代であったのか、また村の指導者として日露戦争、満州...
『君の名は。』ヒットの要因はいろいろと分析されているが、この作品が日本的悲恋物の系譜に属する作品であったことが大きいと考えられる。日本人は近松浄瑠璃の昔から、共同体の制度や倫理に阻まれて、死に行く恋人...
application/pdf本稿では、多賀城南面における街並み形成の前提として、宝亀十一年(七八〇)の伊治公呰麻呂の謀反を契機とする多賀城の火災と復興、それらと征討との関連を検討した。まず、多賀城の...
application/pdf『日本書紀』の崇神紀や景行紀などには,上毛野氏に係わる祖先伝承が掲載されている。この現象は東国出身氏旅としては異例であるが,内容は①始祖は崇神天皇の皇子の豊城入彦命,②東...
application/pdf本稿では、従来個別の地域に即して蓄積されてきた神職組織研究を相互比較することによって、近世の神職組織の存在形態とその特質を解明した。対象は、これまでの研究が触頭―触下とい...
農書は、わが国では元禄時代(1688~1703)を境に上層農民や下級武士等によって著述されてきた農業技術書である。若松城下近くの幕内村(会津若松市)の肝煎佐瀬与次右衛門は、貞享元年(1684)に『会津...
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