戦後の高度経済成長に伴う工業化の進展や所得水準の向上は国民に豊かな生活をもたらしたが、一方で大量生産・大量消費・大量廃棄を基礎とする社会経済システムが形成されたことにより、地球温暖化や廃棄物処理などの環境問題を深刻化させた。わが国の廃棄物は、家庭やオフィス等から排出される一般廃棄物と産業活動に伴う産業廃棄物に大別される。後者の産業廃棄物は、産業間の中間取引や最終需要と密接に関係しており、産業廃棄物の排出構造を総合的に把握する際には、国全体あるいは地域レベルで、財貨及びサービスの流れを総合的に把握できる産業連関表の利用が有効である。 本研究では、1990年、1995年、2000年の3時点における全国9地域間産業連関表と環境省の産業廃棄物排出量データを用いて、産業廃棄物排出分析用の地域間産業連関モデルを構築するとともに、1990年〜2000年の地域経済と産業廃棄物排出の関連を時系列で分析した。その結果、産業部門の中では、建設業と水道・廃棄物処理の2部門が産業廃棄物排出に大きな影響を及ぼしており、種類別では汚泥とがれき類の影響が大きいこと、産業連関モデルに基づく要因分析の結果より、排出係数要因が発生量増加の要因として影響しており、今後の排出抑制に向けては、直接の排出部門における対策が必要であることが明らかになった。さらに、サービス部門が集中する関東経済と相対的に物財部門に特化した地方圏経済における産業連関が、地域間交易を通じて他地域の産業廃棄物誘発を引き起こしていることから、地域間交易をふまえた産業廃棄物の排出抑制が重要であることを示した。The high rates of post-war economic growth, industrialization and rapid...