帯広畜産大学放牧飼養させた乳牛の乳中脂肪酸組成に及ぼす影響を、抗ガン作用を有する機能性を有する共役リノール酸(CLA)を中心に検討した。試験1では泌乳牛を昼夜放牧もしくは制限(昼間)放牧させている牛群と混合飼料(TMR)のみを給与した非放牧条件で飼養された牛群において、給与飼料(牧草・混合飼料)および乳中の脂肪酸組成を4月から12月まで調べた。その結果、放牧期間中(5月から10月)の乳中のCLA割合は昼夜放牧>制限放牧>TMRの順になり、放牧飼養させることによりCLA割合が増加することが確認できた。牧草の脂肪酸組成や脂質含量の季節変動が少なかったことや、放牧への依存割合が高まるに連れて乳中のCLA割合が高まったことから、放牧期間における乳中のCLAの変動割合は、牧草摂取量、特にαリノレン酸の摂取量と関連が高いと推察された。試験2では放牧および非放牧条件で乳牛を飼養し、乳中のCLAの合成原料となるαリノレン酸とリノール酸の摂取量と乳中の.CLA割合との関係を検討した。その結果、αリノレン酸の摂取量と乳中のCLA割合との間に正の相関が認められ、放牧飼養時にみられる乳中のCLA割合の増加は、αリノレン酸の摂取量の増加により乳腺へのバクセン酸供給量が増加によるものと推察された。試験3では、放牧飼養時における十二指腸内容物の脂肪酸組成を調べた。その結果、十二指腸へのバクセン酸移行量はCLA移行量の10倍近くあり、放牧飼養時における乳中のCLA割合の増加は主としてバクセン酸供給量の増加によるものと判断された。さらに試験4では乳に含まれるCLA酸が乳製品に移行するか否かを検討するため、放牧飼養させた乳牛の乳を用いてチーズを製造した。その結果、乳中のCLA割合とチーズ中の共役リノール酸割合と...