石川県におけるキノコ生産について、ポランニー(1966)の概念枠組を援用して、知識体系の関係性と相互作用を分析している。具体的には、比較的結びつきが強い伝統的なコミュニティでの暗黙知と、外部の専門家から伝播されるマニュアル化された明示的知識を対象として、どちらの知識体系のほうがより効率的に高品質のキノコを生産しているのかを検証した。題材としては、能登半島においてブランド化が進められている「のとてまり」を対象とし、全体の生産量と、高付加価値の品質ランクになる頻度を、新規の農家と従来から干しシイタケ等を生産を実施してきた農家を比較した。 両者の生産量や効率の比較から、従来の農家が持つ知識である伝統的知識が必ずしも生産量の向上や効率に結びつくわけではなく、新しい技術の習得の阻害要因にもなる可能性が示唆された。具体的にはマニュアル化された、のとてまりのキノコ生産に、過去の知識が生産量と効率で貢献しておらず、むしろ、独自の判断での変更や省略化をしてしまう行動などが報告された。 This paper examines the relationships between traditional and modern scientific knowledge regarding shiitake mushroom production in the Ishikawa Prefecture of Japan. In the Noto Peninsula in Ishikawa Prefecture, the success of a new variety of shiitake, the Noto-Temari brand, has boosted the number of farme...