Oviposition site selection by Japanese treefrogs in relation to water quality and growth of tadpoles

カエル類では、幼生期の子は親が選択した産卵場所から移動することが困難であるため、産卵場所の環境が親の適応度に大きな影響を及ぼす。また、カエル類は環境の変化に非常に敏感なことが知られており、産卵場所の水質や水辺の植生の変化が個体群の大きさや種の多様性に影響を与える事例も報告されている。したがって、カエル類の産卵場所選択がどのようになされているかを知ることは、行動生態学的にも保全生態学的にも重要な課題のひとつである。 アオガエル科のモリアオガエルRhacophorus arboreusは茨城県を除く本州全域及び佐渡島に生息する日本固有種である。本種は樹上で産卵するという他のカエルには見られない繁殖特性を持つため、各地で天然記念物に指定されて保護されている。本研究では産卵場所の水質条件がモリアオガエルの繁殖（産卵場所選択と幼生の成長）にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的として、繁殖期にいくつかの水場における卵塊数密度を調査し、その場所の水質などを測定した。加えて野外での幼生の飼育実験も行い、上陸までの成長を記録した。 結果として、モリアオガエルの卵塊数密度は水温が高い場所で高く、なかでもリンや窒素の濃度が高く富栄養化した場所で高かった。また、そのような場所での幼生の成長率と生存率はともに高かった。これらの結果は、モリアオガエルは産卵場所として、幼生の成長率と生存率が高くなるような条件の水場を選択していることを示唆している。departmental bulletin pape