本試験はこれまでの直播栽培法の一層の省力化,安定性,多収性および低コスト化を目的として1992年に引き続き無代掻き作溝直播栽培法の実証試験を行った。岡山大学農学部附属農場の水田において品種日本晴を用い,1993年5月18日に乾田状態の水田に溝幅30cmと20cmで作溝を行い,10a当り4.5kgの種子を動力散粒機で播種し,播種後湛水を行った。作溝幅30,20cmそれぞれの区についてカルパーを粉衣した区と無処理区を設けた。また,参考区として慣行移植区を設けた。倒伏防止を目的として出穂前17日に倒伏軽減剤を直播区と移植区の一部に処理した。得られた試験結果の概要は以下のとおりである。(1)湛水後の溝の深さは,溝幅30cm区および20cm区ともに,播種翌日に約1/2となり,湛水直後の溝の崩壊に伴って種子が覆土されることが確認された。(2)出芽・苗立ち率はいずれの区でも高く,特に溝幅30cm区で,さらにカルパー粉衣区で高くなった。また,種子深度は溝幅30cm区が溝幅20cm区より深く,覆土効果は溝幅30cm区で高かった。さらにカルパーを粉衣した区で覆土効果が高くなる傾向があった。(3)穂数は移植区に比べ直播区で,溝幅20cm区に比べ30cm区で多くなったが,カルパー粉衣による影響は小さかった。一穂穎花数は直播区に比べ移植区で多かったが,m2当り穎花数は各区ともに24~28×103の範囲にあった。精玄米収量は溝幅30cm・カルパー粉衣区で582g・m-2と最も高く,移植区よりも多収を示した。(4)9月上旬に接近した台風の影響で各区ともに倒伏がみられたが,倒伏軽減剤の処理により上位節間,葉身長,穂長が短縮し,処理区では全く倒伏が認められなかった。しかし,倒伏軽減剤処理により移植区では増収が...