CTは非常に優れた診断機器であり、日本は世界の中でも有数のCT保有大国である。CT検査によって生じる被ばく線量はごくわずかなものであるが、低線量被ばくの健康影響に関する報告は年々増加しており、小児期におけるCT検査で白血病などの発がんリスクが増加するといった報告もある。低線量の被ばくに関しては、生物学的線量評価法のゴールドスタンダードである二動原体染色体(dicentric chromosome: Dic)解析(dicentric chromosome assay: DCA)による被ばく量評価の報告もある。我々は低線量医療被ばくの中でも比較的線量の高いCT検査(数mGy~数十mGy)による染色体異常頻度の変化について、ギムザ染色およびFISH法によるDCAおよびペインティング法による1番、2番、4番染色体の転座解析を行った。また、低線量被ばくにおける各解析方法の有用性についても検討した。 対象者は福島県立医大を受診した62~83歳までの男女12名(男性3名、女性9名、平均71歳)。CT前後の末梢血リンパ球から作製した染色体標本を各解析方法(ギムザ法、Centromere-FISH法、ペインティング法)につき2,000 メタフェース以上解析した。 結果、ギムザ法、Centromere-FISH法ともに1回のCT後にDic数の有意な増加が認められた。一方で転座解析ではDic数よりも多くの転座が認められたが1回のCT前後では有意な転座数の増加は認められなかった。また各解析法ともに過去に放射線治療・化学療法を行った群と行っていない群に分けて比較したが、CT前の時点での染色体異常頻度に有意な差は認められなかった。またDCAでは2,000 メタフェースの解析で両解析法のDic増加量が相関...