Tasuku Sakata and Kanto Gakuin\u27s Education : Civic Culture and Christian School in Japan

公共的市民文化の形成は現代日本における緊急の課題である。近代日本は公共的市民文化を形成できずそれを戦後の課題とした。そして現代日本は、いま、それを避けて通れない課題として自覚する。官学・私学ということばがある。官学を優位に位置づけた近代日本において私学は限界をもった存在であった。限界をもった存在というのは決して私学の力量の低さだけを意味するものではない。私学が掲げる理念と教育が近代日本では官学優位のなかで正しく評価されなかったということである。官学とは異なる精神=〈志学〉をもって創られた学校が複数ある。それらの学校の幾つかが公共的市民文化の担い手育成を目標に掲げていたということは記憶されてよい。坂田祐の関東学院もその一つであった。小論は坂田祐の学校開設に至る経緯を彼の生きた時代とともにふりかえる。彼は、将来、国家のみに貢献する人間ではなく、社会に貢献する人間が必要になると考えていた。学校は公共的市民文化の担い手育成を目指さなければならないと考えていた。私は坂田祐のなかに先見性豊かな教育者の情熱をみる。いま大学は〈志学〉を忘れてしまったのではないかという反省がある。公共的市民文化の形成における学校の位置が改めて検討されてよい段階にある今日、関東学院開学に込めた坂田祐の理想と生き方は有益な示唆を提供する