本稿の目的は,LPのシャドウ・プライスに基づく振替価格が,部門間の分権的な資源振替の決定ではたす有用性を探求することにある。部門間で資源が振替えられるとき,複数の諸部門のキャパシティ(利用可能資源量)は同時に変化するし,資源受入れ諸部門のコストも同時に変化する。このような状況のもとで,資源の振替決定を「シャドウ・プライスに基づく振替価格」を使って行うには,この振替価格の値の安定性が問題の焦点になる。ところで,LPモデルやシャドウ・プライスを振替価格や分権管理に適用する研究は,多くの会計論文でなされている。たとえば,Dopuch and Drake〔1964〕,Samuels〔1965〕,Bernhard〔1968〕,Manes〔1970〕,Onsi〔1970〕,Godfrey〔1971〕,Abdel・Khalikand Lusk〔1974〕,Onsi〔1974〕,Talwar〔1974〕,Kornbluth〔1974〕,Watson and Baumler〔1975〕,およびBaily and Boe〔1976〕等である。他方,会計の分野でなされたLPの感度分析ないしパラメトリック計画法に関する研究には,Charnes and Stedry〔1966〕,Rappaport〔1967〕,Jensen〔1968〕,Wright〔1970〕,およびHartley〔1970〕などがある。本稿は,シャドウ・プライスによる振替価格の研究と,LPの感度分析の研究とを結合して,一歩進展させ,複数条件変化のもとでの振替価格の安定性に関する命題を導いたものである。シャドウ・プライスに基づく振替価格の理論的研究と,その実践的適用は会計の分野においてこそなされるべきであろう。上記のテーマの研究にあた...