Moral Depreciation, Automatic Machinery and Rational Transformation : Reflections based on Part 4 of Capital related to the Fukushima Disaster Complex

application/pdf「道徳的摩損」と訳されてきた Moralischer Verschleiss, Moral Depreciation という表現（『資本論』第一巻15章以下）にマルクスがこめた批判的含意はこれまで適切に解釈されることがなかった。Verschleissとは普通の摩損という意味のほかに，軽視という意味をもつ。機械等の資本制的使用においては，労働の強化，安全性の無視，既に投資された固定資本の保全のためにする新規技術の抑制などが結果する。道義性の軽視である。 そうした「死せる機械」との類比から，ウェーバーは官僚制を「生ける機械」と評していた。技術における機械装置と組織における官僚制とは交差連結して自動機械装置をかたちづくる。 フクシマ複合災害は，こうした人工的構築体が破綻した明白な実例である。原発へ投資された借入を返済すべく再稼働・延長をはかるに至っては，道義性の破壊というほかない。「啓蒙が神話に退化」（『啓蒙の弁証法』）して既に久しい。 近年のパンデミックをめぐる議論として「技術の民主制化」論（フィーンバーク）を点検し，加えて独占・WTO特許制度などを考慮するとき，マシーンとしての技術・組織の編成こそが我々の理性的刷新能力を阻害する物質的要因であることが確認される。departmental bulletin pape