Departure from the Relationship of Complicity

「共犯関係からの離脱」とは、共犯関係が成立してから犯罪が完成するまでの間に、共犯関係にある一部の者が共犯関係から離れたが、残余の共犯者が犯罪を続行し、既遂(または未遂)に達した場合をいう。ここで、離脱者は離脱前の行為ないし結果についていかなる責任を負うか、また、離脱後の行為ないし結果について責任を負うかどうか、が問題となる。「共犯関係からの離脱」のような事態は、現実には必ずしも希有のことではないが、現行刑法にはその取り扱いを定めた規定はなく、また従来の判例と通説はこれをもっぱら共犯における中止犯の問題として取り扱ってきた。しかし、両者はそもそも次元の違う問題である。本稿は、従来の学説と判例への検討を踏まえ、共犯関係の存在する限り離脱が可能であると認識し、それを共犯類型ないし共犯者の関与形式の違いに着目しつつ、共犯関係にある共犯者の役割に応じて、それぞれの要件を具体的に検討した。結論として、離脱前後の共犯関係がなお同一のものであるかどうかによって離脱の成否を判断する共犯関係解消説の妥当性を主張しようとするものである