近年、文学系の学会において国語教育の危機が論議される中、中古文学会では研究を教育に生かすための授業方法の試みが提案されている。本稿は2015年度に設置された本学文芸文化学科の専門科目の中で、研究成果を授業に活用出来ないかと考え、その方法を実践している授業について報告するものである。取り上げるのは、2 年次必修科目の「日本文学概論」である。当該科目では、いくつかのテーマのもとに様々な日本文学作品を扱っている。 本稿で報告対象とするのは、『蜻蛉日記』と『和泉式部日記』を扱う授業での試みである。両作品は本文解釈に関わる部分で、研究者の意見が対立している箇所を有している。そこで、研究上の問題点をそのまま授業の課題として示し、学生たちにどちらの見解を支持するかを理由と共に答えさせた。その後、全員の回答をフィードバックして学生たちに共有させ、個々の考察をさらに深めるようにした。 100名規模の講義科目であるが、授業後に学生たちが提出したリアクションペーパーの記述や当該科目の授業評価結果から、積極的に課題に取り組み、主体的に参加したという回答が多く見られ、研究成果を授業で活用することの効果が感じられる結果となった。departmental bulletin pape