The Growth Process of Teacher's Counselors（Ⅱ）

本研究は、システマティック・アプローチ（和歌山方式）での、教師カウンセラーの成長過程に生じる、悩み・不安・葛藤・ジレンマなどの解消に注目し、カウンセラーとしての成長の様相とその成長を促進する諸要因について検討することを目的とした。 研究Ⅰ（前回報告、第１報）では、教師カウンセラーのイニシャル・ケースにおける関わりを通して生じるさまざまな悩み・不安・葛藤・ジレンマなどについて、実態を客観的に把握するために質問紙調査をおこなった。調査対象は、和歌山県下において、現在教師カウンセラーを遂行している１３５名とし、内１２８名からの回答を得た。 その結果、教師カウンセリングとの出会いは、直接不適応児童・生徒への関わりであり、そこで教師に何らかの悩み・不安・葛藤・ジレンマなどが生じていた。そして、教師が自ら積極的にその子へ関わることと、スーパーヴァイザーからの援助を得ることで、悩み・不安･葛藤・ジレンマなどが解消・克服・軽減していた。さらに、その体験が教師自身のカウンセラーとして成長に結びついていると感じていることが明らかになった。 研究Ⅱ（今回報告）では、研究Ⅰで得られた知見をもとに、教師カウンセラーの成長には、悩み･不安･葛藤･ジレンマなどの解消･克服･軽減が関係していることについて検討した。具体的には、カウンセラーとしての成長段階として３時点を設定し、その３時点間で生じる悩み・不安・葛藤・ジレンマなどの差異とその解消・克服・軽減の変化について分析した。調査対象者は、研究Ⅰの被調査者の中から、イニシャル･ケースで直接不適応児童･生徒に関わっていた教師カウンセラー１１４名に質問紙調査を実施し、内９０名からの回答を得た。 その結果、悩み･不安･葛藤･ジレンマなどの要因として、「他者に対する無力感」、「自己に対する否定感」、「技法に対する拒絶感」、「役割に対する不全感」の４因子が抽出された。特に、「他者に対する無力感」が解消･克服・軽減することによって、カウンセラーとして成長していることが明らかになった。また、カウンセラーとしての成長にともなって、「役割に対する不全感」が強まることもあきらかとなった。すなわち、教師がカウンセラーとして成長する過程には、悩み・不安･葛藤･ジレンマなどが必然的に生じ、特に「他者に対する無力感」の解消・克服・軽減を体験することにより、確実に教師カウンセラーとして成長するといえよう