平成21~23年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書本研究では、強力な酸化ストレス作用を有するトリブチル錫が潰瘍性大腸炎の発症・増悪、さらに炎症に起因する大腸がんの発生と進展に関与する可能性について検討を行った。大腸特異的発がん化学物質アゾキシメタンと大腸炎誘発剤デキストラン硫酸ナトリウム投与による潰瘍性大腸炎マウスモデルを用いて、トリブチル錫曝露により大腸炎の増悪に伴って大腸発がんが促進されることを見いだした。腫瘍の発生に先立ってTh2型サイトカインとTh2型サイトカインによって発現誘導される活性化誘導シチジン脱アミノ酵素(AID)の発現が誘導されること、この発現がトリブチル錫曝露により増強されることを見いだした。一方、内因性抗酸化因子チオレドキシンを過剰発現させたトランスジェニックマウスでは、大腸炎が増悪される一方でと大腸発がんが抑制されていた。我々は既にトリブチル錫が酸化ストレス作用を介してTh2細胞分化を促進しTh2型免疫を増強することを示している。従ってこれらの結果は、トリブチル錫曝露による炎症性大腸発がん促進作用にT細胞免疫応答攪乱によるAID発現増強を介した癌原遺伝子や癌抑制遺伝子の突然変異誘導が寄与している機構を示唆している。In the present study, the possible involvement of a prominent environmental chemical, tributyltin, in the exacerbation of colon inflammation and promotion colitis associated colorectal cancer was examined. Using a ...