金沢大学医学部1. 基礎的研究:cyclphosphamide投与により免疫能を低下させたWistar系径尿未知的に接種し, 上行性腎盂腎炎の実験モデルを作製した. その結果, (1)菌接種3日後までに29.7%, 7日以降で78.5%のラットに腎盂腎炎が発生した. (2)組織学的には3日後までの腎盂腎炎は腎盂に限局する急性炎症で, 7日以降のそれは腎皮質におよぶ広範な慢性炎症であり, (3)腎盂腎炎の程度が高度になるにつけ腎組織内および尿中Candida数の増加する傾向が認められた. (4)また, Candida spp・の主要代謝産物であるD-arabinitolの血清中濃度をガスクロマトグラフィーで測定したところ, 菌接種3日後までのラットにのみ検出可能であった.2.臨床的研究:尿中より10^4/ml以上のCandidaが分離された20例を対象とした. 14例は胆癌患者で, 16例は尿路へのカテーテル留置症例であり, 直前まで全例に抗菌化学療法が施行されていた. その結果, (1)Candida spp.の細胞壁mannonに対する血清抗体価を経時的に測定し, Candida腎盂腎炎やCandida血症を疑われた4例に4倍以上の上昇が認められた. しかしこの有意な上昇までに14〜31日を要したことより, 上記病態の早期診断の指標としては有用でないと考えられた. (2)血清中D-arabinitolは無症候性Candida尿症やCandida膀胱炎の疑われた症例に比し, Candida腎盂腎炎やCandida血症の疑われた症例において高濃度で検出されるものが多く, (3)後者の4例に5-fluorocytosimeを投与すると全例にD-arabinitolの速やかな下降,...