異なる植物群落間の境界をエッジと呼び、エッジを挟んだ群落が混ざり合ってできた移行帯をエコトーンと呼ぶ。 多変量回帰木(Multivariate Regression Trees:MRT)は種と環境間の関係のモデリングに有効な手法である(Deʼath 2002)。MRT は環境要因と対応させて多変量の植生データを分類する手法であるため、環境要因と対応したエコトーンの 位置や幅の検出が期待できる。本研究では、MRT をエコトーンの位置と幅の検出に適用することを目的とした。まず、 MRT によってエコトーンの位置と幅を検出できるか検証するために、人為的に作成したデータを用いたシミュレーション を行った。次に、野外調査で得られたデータを用いた MRT を行い、エコトーンの位置と幅の検出を試みた。 シミュレーションで用いたデータは、異なる植物群落が隣接している場所で、そのエッジを横切るようにして設置した調 査区で得られるものと設定した。出現種数を 50 種とし、調査区に沿って植生構造の異なる 4 つのグループがあると仮定し た。環境データはベルトトランセクトに沿って測定される相対光量子束密度を仮定し、ベルトトランセクトに沿った勾配が なく、ランダムに変化するものを 1 つ、ベルトトランセクトに沿って勾配のあるものを 3 つ作成した。 野外調査は富士山北西麓に位置する野尻草原(標高約 1 , 300 m)の草原 - 森林エッジで行った。調査区として、草原と 森林を横切るようにして 0 . 5 m × 50 m のベルトトランセクトを設置した。ベルトトランセクトを 0 . 5 m × 0 . 5 m の 100 コドラートに分割し、さらにそのコドラートを 0 . 25 m × 0 ....