金沢大学がん研究所HIV感染した血友病患者では血清IL-S濃度が上昇するのに対して、末梢血白血球のリポ多糖類(LPS)刺激によって誘導されるIL-S産生能は低下していた。すなわち、HIV感染によって、外来性の刺激に応じてサイトカインを産生するマクロファージの能力は低下していた。この誘導性サイトカイン産生能の低下の機構を分子生物学的に検討するために、LPS刺激によるIL-S遺伝子転写活性化機構をヒト単球白血病細胞株THP-1を用い検討したところ、IL-S遺伝子エンハンサー領域に存在するNF-kB結合領域へのNF-kBの結合が転写活性化に重要であることが判明した。さらに、THP-1細胞で認められるLPSによって誘導されるNF-kBコンプレックスの形成は、HIVをin vitroで感染させると減少した。THP-1細胞にIL-S遺伝子エンハンサーを結合させたルシフェラーゼ発現ベクターと、HIVの種々の構成成分の発現ベクターとを同時に遺伝子導入したところ、truncated formのTat蛋白を発現するベクターがbasalならびにLPS誘導性のルシフェラーゼ活性をともに低下させた。すなわち、Tat蛋白がNF-kB蛋白による遺伝子の転写活性化を抑制することによって、マクロファージによる種々の炎症性サイトカインの誘導性産生能を低下させていることを示唆する結果を得た。この点についての解析を進めるために、無細胞系でLPS依存性に起きるNF-kB活性化を、ゲル・シフト法で検出する方法を確立した。さらにこの方法を用いて、NF-kBの阻害因子であるIkBのリン酸化にチロシン・リン酸化酵素が関与しているのに対して、NF-kBのリン酸化にはチロシン・リン酸化酵素以外にスタウロスポリン感受性リン酸化酵素...