金沢大学がん研究所消化器癌の転移能(metastatic potential)を知るべく、病理組織学的多様性、腫瘍マーカーを含めた生化学、発育速度、癌の浸潤・転移に関与する遺伝子異常、血管新生因子などの諸因子などより転移予知の可能性を探っており、その成果は転移予知の重要な指標となりうる事が判明した。また実験的には、ヌードマウスを用いた同所移植による胃癌肝転移モデルの開発に成功し、PCR法を用いた肝微少転移巣の検出を試みているが、この同所性胃癌肝転移モデルの成功は、転移成立機序の解明、潜在的転移能、そして転移抑制実験を行なう上で重要なモデルとなった。一方、浸潤・転移に深くかかわっている細胞外基質分解酵素、マトリックスメタロプロテナーゼ(MMPs)とそのインヒビター(TIMPs)のRNAレベルでの発現、免疫組織学的検討、zymographyによる解析、血清中のMMPs、TIMPsを測定し、潜在性転移能の有無を胃癌組織で検討し、その成果を発表してきた。なかでも当研究所清木教授らにより同定された膜型MMP(MT-MMP)はMMP-2活性化因子として知られ、胃癌組織内でのMT-MMP、MMP-2の共発現している胃癌では、88%に静脈侵襲陽性であり、血行性転移との関連で注目された。また、MMP-7は胃癌組織において癌細胞特異的に発現し、分化型腺癌に優位であり、なかでも癌細胞の癌細胞の脈管内浸襲に重要であると考えられた。一方、胃癌細胞における転移成立に関与するその他の転移関連遺伝子群(血管新生因子、増殖因子、接着因子等)の検討を行なったところ、血行性転移においては血管新生因子vascular endothelial growth factor (VEGF)とMMPsの発現が著名で転移予知可...