金沢大学がん研究所私は、膵液中のK-ras変異の検索が膵癌診断に有用であることを報告してきたが、p53分析を加えても陽性率は100%になるわけではなく、さらに特異性の高い遺伝子を分析の対象に加えることが望まれる.p16は、cyclin dependent kinase(CDK)インヒビターをコードする癌抑制遺伝子として注目され、膵癌培養細胞株では高頻度に不活性化されていると報告されている。手術ないしは剖検で得られた膵癌62例、嚢胞腺種8例、慢性膵炎20例、正常膵6例のパラフィン包埋切片に対してp16モノクローナル抗体(G175-405)を用いた免疫染色の検討では、膵癌で41.9%(26/62)にp16蛋白発現の欠失がみられ、膵癌は慢性膵炎に比較してp16蛋白発現の欠失が有意に高率であった(p<0.01)。さらに、膵癌の組織学的分化度でも、中.低分化度(G2,G3)は高分化度(G1)に比してp16蛋白発現の欠失は有意に高率であった(p<0.01)。しかし、膵癌の各臨床病理学的事項とp16蛋白発現の有無を比較しても有意差はみられなかった。一方、膵癌組織のp16免疫染色性すなわち蛋白発現の低下した領域をmicrodissection法にて区分し、DNAを抽出した。p16遺伝子の3つのエクソンに対応するプライマーを用いてPCRを行ない、homozygous deletionの有無を判定した。膵癌26例中エクソン1では5例(19.2%)に、エクソン2では6例(23.1%)にPCR産物の欠損が認められたが、エクソン3には認められず、合計すると26例中9例(34.6%)にhomozygous deletionが認められた。さらに、PCR産物が得られた17例については、PCR-SSCPにより...