金沢大学ナノマテリアル研究所効率的なエネルギー利用を目指し、電子スピンと波動関数のトポロジーが重要となる熱電変換現象の一つである異常ネルンスト効果の研究に取り組んだ。密度汎関数法に基づく第一原理計算手法を用いて、Fe化合物や二次元物質について多く調べた。主な研究実績は、次の3点にまとめられる。(1)強磁性状態のFeCl2の単層について、異常ネルンスト効果を調べ、6muV/K程度の大きな異常ネルンスト係数が得られる可能性あること、その起源がブリルアンゾーンのK点近傍の大きなベリー曲率であることを明らかにした。この成果を論文論文 R. Syariati, S. Minami, H. Sawahata and F. Ishii, APL Materials 8, 041105/1-6 (2020)として出版した。(2)実験グループと共同で、鉄にアルミやガリウムを添加した材料が鉄単体より20倍大きな異常ネルンスト効果を示すこと、その起源が、ノーダルウェブと呼ばれるトポロジカルなバンド構造に由来していることを明らかにした。この成果はA. Sakai, S. Minami, T. Koretsune, T. Chen, T. Higo, Y. Wang, T. Nomoto, M. Hirayama, S. Miwa, D. Nishio-Hamane, F. Ishii, R. Arita and S. Nakatsuji, Nature 581, 53-57 (2020) として出版し、複数の新聞等で報道された(2020 年4月28日付 北國新聞, 2020年4月30日付 日刊産業新聞、等)。(3) 実験グループと共同で、運動量空間での非自明なスピン構造が銅に色素を塗るだけで生じ、ス...