金沢大学医薬保健研究域医学系各種接着分子ノックアウト(KO)マウスを用いて実験的抗リン脂質抗体症候群(APS)モデルマウスの作成を試み,抗リン脂質抗体(aPL)発現,血栓発症におよぼす接着分子の関与について検討した.C57BL/2(wild-type)マウスにヒトβ_2-glycoprotein I(β_2GPI)を能動感作することにより,実験的APSモデルマウスを作成した.同様にICAM-1,P-selectin,E-selectin,L-selectin KOマウスにβ_2GPIを感作し実験的APSマウスが作成されるか検討した.これらのマウスにlipopolysaccharide(LPS)を腹腔内投与しFDP,TATおよび腎糸球体血栓頻度(%GFD)を測定し,本モデルにおける血栓傾向を解析した.Wild-typeマウスでは,β_2GPI感作8週後に有意の血小板減少,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長,β_2GPI依存性抗カルジオリピン抗体(acL/β_2GPI)価の上昇を認め,aPLの発現を確認した.ICAM-1,P-selectin,L-selectin KOマウスでも同様の変化が見られたのに対し,E-selectin KOマウスではいずれのパラメータについても有意の変化は認めなかった.LPSを腹腔内投与したところ,β_2GPI能動感作wild-typeマウスでは非感作wild-typeマウスと比較して有意のFDP,TATの上昇,%GFDの上昇を認めたものの,接着分子KOマウスではいずれのKOマウスにおいてもFDP,TAT,%GFDの有意の上昇は認めなかった.以上の結果より,抗リン脂質抗体の発現にはE-selectinが,血栓発症に鱒そのほかの接着分子の...