昭和基地のエネルギー源としてのディーゼル発電装置は, 第1次観測(1956年)の20kVA 2台に始まり, 基地の拡大に伴い45kVA, 65kVA, 110kVA, 125kVAを経て, 1984年にはついに200kVA 3台設置(内1台は1985年設置)の規模に達し, 越冬隊員も11名から35名に増加した。第1次の基地開設当時より発電用ディーゼルエンジンのトータルエネルギーシステム, すなわちエンジンの冷却水の熱量および排気熱量の回収を行い, 基地燃料の節約に寄与している。これらの廃熱により, 冬季は雪または氷を解かして飲料水および雑用水を作り, さらにそれを廃熱で温めて温水を作り, 水道, 風呂および暖房に利用してきた。1984年に完成した新発電棟では, エンジン冷却水廃熱の回収に主力が注がれ, これによって低温水タンクならびに高温水タンクの水を温める。高温水は冷水タンクの冷水とともに水道配管されて, 新発電棟の2階に設けられたウエットエリアに供給され, 一方約100m離れた食堂ならびに娯楽室の温水暖房にも利用されている。低温水タンクの低温水は熱交換器を介して戸外に設けた100klおよび130klの貯水槽の保温ならびに冬季の融雪造水に利用される。排気熱の回収のためには, 戸外にヒートパイプ方式のガス-空気熱交換器を設けて発電棟への取り入れ空気を予熱しているが, 実測によると回収熱量は排気保有熱量の約3.9%に過ぎず, 今後の改良を必要とする。一方, みずほ基地においても, 1971年以来16kVAまたは12kVAディーゼル発電機の冷却水廃熱のみを利用して, 融雪造水ならびに温水を作り, 風呂および雪面下の2室の暖房をこれのみで賄っている。極地における風力エネルギーの利用...