医療技術の進歩に伴い,深在性真菌症は増加している。なかでもアスペルギルス症は予後不良で重要な真菌症である。近年,アゾール系薬に耐性を示すアスペルギルスの検出が世界各地で報告されている。地域による差はあるが,おおよそ0.3~28.0%と報告されている。耐性機序については,アゾール系薬の標的部位であるCYP51の変異によるところが多く,cyp51A遺伝子のhot spotも複数報告されている。一方で,耐性を獲得する機序については一定の見解が得られていないが,抗真菌薬を含む農薬などの曝露により環境中で耐性を獲得するとする説と,慢性肺アスペルギルス症などのアゾール系薬が長期投与された患者の体内で獲得するという説が提唱されるが結論にいたっていない。長崎大学病院で検出されたAspergillus fumigatus 196株を対象としたわれわれの検討では,itraconazole(ITCZ),posaconazole(POSA),voriconazole(VRCZ)に耐性を示す株は,それぞれ,7.1%,2.6%,4.1%であった。また,これらの株が検出された患者の背景の解析では,耐性株が検出されるまでに使用されたITCZの累積投与期間が長ければ長いほど,ITCZのMICが高い株が検出される頻度が高く,同様にPOSAのMICとも正の相関が認められた。一方,VRCZとは相関関係はなく,その理由として,これらの耐性株の多くが,VRCZの耐性とは無関係なCYP51の54番目のアミノ酸変異を有していたことが考えられる。臨床的にアゾール耐性A. fumigatusの分離と予後が相関するかについては未解明であるが,アゾール系薬がアスペルギルス症治療の主体であることから,新たな抗真菌薬の開発,既存の抗真...