金沢大学医薬保健研究域医学系ミスマッチ修復遺伝子の変異をスクリーニングするため,平成12年度は悪性頭蓋内腫瘍の計32例について,BAT-26を用いたマイクロサテライト不安定性を検討した.しかし,同年度の研究実績報告書に記したごとくマイクロサテライト不安定性,すなわちミスマッチ修復遺伝子の変異が示唆される症例は検出されず,平成13年度に予定していた継続実験,「第10染色体ヘテロ接合性の解析と成人例との比較」は中止した.しかし本年度は,臨床上極めて重要と思われる以下の問題に関し検討を行い,興味ある結果を得た.知見は現在国際医学雑誌に投稿中である.内容を以下に記す.Neurocytoma, dysembryoplastic neuroepithelial tumor(DNT)は青年期に好発する良性神経性腫瘍であり,病理組織学上oligodendroglioma酷似の部分を含み,診断に難渋する場合がある.各々は術後の放射線治療,化学療法等に関し,適応,予後が異なり,確実な診断が望まれる.従来の形態学的,免疫組織化学的手法では診断的限界が叫ばれており,新たな手法の確立が急務であった.そこで,central neurocytoma 6例,DNT2例, oligodendroglioma 7例, oligoastrocytoma 4例,診断困難2例,計21例についてLOH1p, 19q, p53変異を検索した.興味深いことにoligo系腫瘍では11例中9例(82%)にLOH1p, 19q,残る2例のうち1例にp53変異を認めたが,central nuerocytoma, DNTではLOH, p53変異いずれも見い出されなかった.診断困難2例のうち一方はLOHを示し,他方はLOH, p53変...