金沢大学医学部附属病院本研究費によりこれまでに、子宮体癌におけるMLH1のメチル化に伴う蛋白発現の低下、および遺伝子不安定性に伴う下流遺伝子の変異について確認しており、さらに得られた成果を以下に示す。1.子宮内膜増殖症におけるMLH1プロモーターのメチル化解析子宮体癌の前癌病変である子宮内膜増殖症では、これまで得られる組織が極めて微量であったためメチル化解析法を行うことは困難であったが、制限酵素処理とBisulfite modificationの後に行うPCR反応を工夫することにより、微量組織からのMLH1プロモーターのメチル化解析が可能となった。その結果、子宮内膜増殖症27例のうち11例(41%)がメチル化を認め、子宮体癌とほぼ同等のメチル化頻度であることが確認された。2.PTEN変異との関連癌抑制遺伝子PTENは、子宮体癌の早期に変異を受けることが報告されている。同様に発癌の早期に関与するMLH1プロモーターメチル化との関連を調べた結果、PTEN変異は子宮体癌の38%、子宮内膜増殖症では19%に認められた。特に子宮内膜増殖症ではより異型度の強い複雑型増殖症により多くPTEN変異を認め、MLH1のメチル化は組織学的変化に先行し、その下流にPTEN変異が起こるという仮説が実証された。3.細胞診検体由来のメチル化、変異の解析本研究では、細胞診など形態学的変化と遺伝子診断を組み合わせた婦人科癌の早期診断を目的としてきた。これまでの予備実験でも、子宮内膜細胞診の際にスライドグラスに塗沫した後の残りの細胞を回収し、メチル化と変異の解析が十分可能であることが確認できた。しかし健常者でのメチル化と変異の頻度はそれほど高くないため、今後スクリーニングにおいて発癌リスクの高い症例を識別する臨...